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March 08, 2005

運命を分けたザイル

 ネタばれあります。

 彼は出会ってすぐに、懸垂下降をしてくれたことを感謝し、
ザイルをきったことは、仕方がないことだと語ってくれた。

 上記の言葉があっているかはちょっと自信ないけれど、人間の心の素晴らしさを感じる言葉だと思う。

 20年前の1985年、アンデスの未踏の西壁に挑んだ男たちの実話である。25歳と22歳の英国青年はそれまでとは違ったキャンプを張らずに他のサポートを受けないアルパイン・スタイルでシウラ・グランデ峰標高6344mの初登者としてアタックを開始した。行きは苦難の西壁を無事に登り切り、頂上までたどり着いたのだが、帰りの遭難の確率は80%と言われているが、それ以上に不安にさせる帰路だった。
 ジョーは、滑った拍子に足を骨折してしまう。同行のサイモン曰く、その時もう無理だ、死んでしまうと思った。ジョーは、彼の表情を見てこのまま置いて行かれても仕方がないなと思った。しかし、サイモンは、アプザイレン(懸垂下降)と呼ばれる、ロープを使って急斜面を降りるやり方をパウダースノーが積もっているために、自らが持ってジョーのアプザイレンを行ったのだ。やがて問題の箇所に来たとき、ジョーはロープを上ることも何をすることも出来ず、1時間半を経過する頃には、二人の体重を支えていた場所では、するすると雪が落ち始め、このままでは二人とも落下の危機に直面していた。サイモンはリュックに入っていたナイフで、ロープを切る。罪悪感に呵まれながらも、ジョーが落ちた辺りのクレパスで大声でジョーを叫んだが答えはなく、自分も本当に生きて帰られるか分からないために、自分のために先を急いだ。ジョーはクレパスには落ちたのだが、奇跡的に助かっていた。骨折だけで死ぬわけではないので、生きる希望を捨てずに、上ることは不可能なクレパスの底を目指し、やっと日の当たるところまで出てこれたのだが、足は思うように動かないために這う体勢で先に進む。20m行こう、20分でたどり着こうと小さな目標を手探りで追い求めながら・・・。しかし、憔悴し食べるものも飲むものもなく、ましてや日数が経っているために、サイモンに見つけて貰えないのではないかという不安もよぎり、精神状態も混沌とし始めたときに、ジョーの張り叫ぶ「サイモンー」の言葉にサイモンは気づき、奇跡的に彼は助かることとなる。
 その時に、まず最初にサイモンに言った言葉が、上記の言葉である。

 サイモンはロープを切ったことで、山岳協会から追放されそうになった。ジョーは彼を庇い、このことを知った作家がサイモンを守るためにドキュメンタリーを執筆した。トム・クルーズがこの版権を望んだそうだが、ドキュメンタリーにしなければ、このことを理解して貰えないと、ドキュメンタリー映画として制作を始めた。彼ら二人がその時の心情を語り、アルプスとアンデスで撮影は行われた。真実を伝えたい。私たちはこのように生きた。語りかける言葉で、ドキュメンタリーでよかったと思った。
 邦題ではザイルのあの場面が強調されているので、見ている最中に、邦題が誤解を与えているのではないだろうかと感じた。Touching the voidが原題になる。英語がおこちゃまレベルなので、何ともいえないだが、voidに空間や割れ目の意味があり、touchingにtouchの触れる以外に、 感動させる, 哀れななどがあるのだが、どういう意味でとらえるといいのだろうか。
 サイモンがロープを切ったことは、現状では仕方がなかっただろうし、山では冷静に対処することが基本でもあるので、彼の判断は正しかったであろう。これが許されないと言われるなら、今後の同ケースを一緒に死ねと言っているようなものだ。ジョーはカソリックだけれど、自分は神から離れていて、最後の時には神をご加護を望むかという問いに望まないと答えていたらしい。だから、彼は、Godと叫ぶことはなく、友に気づいて貰うことだけをよりどころとした。しかし、日数も経ち、自分をそこまで追い込めれるだろうか。あたたかい光を受けているときに、もうこのままでいいとも思っていたのだから。彼が奇跡的に助かったのは、運が良かったと簡単に片づけられてしまうかもしれないが、長い距離を一人で足を引きずりながら、最初のキャンプ地までたどり着いたことは奇跡でも何でもなく、彼の希望・根性によって掴んだものなのだ。決して諦めないことが、この映画で語られている。

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