« ぱやぱや | Main | たかじんの委員会 »

August 07, 2005

霧の中の風景

 昨日は花火の浴衣姿を尻目にKAVCへ出かけて、テオ・アンゲロプロス監督作品を見てきました。新開地通りでは縁日も開催していました。夏だねぇ~。
 父はドイツに行っていると信じた姉弟が、アテネから国際特急の列車に乗り込んで、ドイツに向かうロードムービーだ。彼らを取り巻く環境はあまり説明されずに話が進む。精神病院にいるカモメのおじさんや最初に下ろされたときに姉が抱きつく母方のおじさんは彼らの中の、身近な大人だった。この二人は顔や声が出てくるのにもかかわらず、母親のことは嫌いではないと言いながら、旅の中では「お母さんがこいしい?」というのが1度しか出てこず、顔も声も出てこないで、夜眠っているか見回りに来る母を弟の方は、看守の確認のようにしか見ていなかった。母性愛を受けることが出来なかったのか、母親に何も求めることはしていない。彼らには母親が不在であり、それを癒すようにドイツにいる父という存在が夢の中にまで現れる。彼らはドイツに向かって旅をし続ける。母方のおじさんに姉の方は、父親がいないことを知らされているが、姉はもしかすると知っている事だったのだろう。弟の夢の中で近づきつつ父と、宛のない父への気持ちが、どうしようもない気持ちを唯一救わせることが出来たのだろう。彼らの旅の中で、通り過ぎる風景の中に色んなものが見え隠れする。車に乗せてくれた青年は、アンゲロプロス監督の作品「旅芸人の記録」に出てくる一座だ。人物が一緒かどうかはパンフが売られていなかったために確認は出来ないが、何度も聞いたセリフをこの映画でも語られていて、その一座の終焉をこの映画で見ることが出来た。彼らがまわる街は寂れた風景で、ギリシャってどの場所もあんなに寂しい風景が広がっているのだろうかと勘違いしそうだ。この中にはたくさんの日常的にはあまり見られない光景が普通に出てくる。またそれを中心に据えている。また、この監督作品の傾向なのだが、ロングで引いていくというのかなぁ、カメラの焦点はその位置に置いて、どんどんカメラが後ろに下がっていくって言い方を。その言う撮り方が多いのだ。そして、彼らがどんな表情をしているのか分からない後ろからの撮影が多い。彼らと関わる大人達の言葉少ない行動から色々この映画のストーリーを読み取っていかないといけない。表情も言葉も少ない主人公の彼らが巻き込まれる悲しい出来事さえ、どう感じているのか、こちらが自分の気持ちを反映させて見ていくような手法である。それには一番面白い人物として、バイク乗りの青年と、姉がお金を頂戴といった青年はどのように考えながら進んでいったのか、客の頭の中でそれぞれとらえ方が違うであろう。あと、姉が青年の部屋に訪れたのも、青年が発した「最初はみんなつらいんだ」のセリフも色々考えることが出来るだろう。あのトラックの運転手に荷台に連れ込まれて、異様に静かだったシーンも観客は複雑に考えさせられたシーンであった。
 果たして自分の解釈は正しかったのか、それを求めた映画では全然ない。しかし、これほどまでに事実は混沌としているものなのだ。
 でも、どう読み解いたのか、私の考えを書くと、母親には男がいるのではないだろうか。そのために見捨てられた感が強いのではないだろうか。帰る家がないような描かれ方で、二人は場所を探しているように感じる。トラックの荷台の出来事が何かを彼女は分かっているのかどうかと言うことでは、私は分かっていないと読む。股から流れ出た血を見て何も考えられずにいたことは間違いないであろう。だから、兵隊の青年にお金を頂戴と言った経緯は体を与えてお金を頂戴と言っているとは思えない。これは少数派かもなぁ。ただ、彼女は疲れ、気を張っていたのから、人に甘えることを知ったのだと思う。バイクの青年は劇団のことも徴兵のこともその他色々考えることがあったのだ。最後の夜青年と一緒にいた男性も、知り合いかもしれないし、そこで初めて知り合ったのかもしれないし、外に出ようとしたのも外で飲み直そうとしていたのかもしれないし、バイクの話になったのかもしれないし、ゲイの相手として一緒に出ようとしたのかもしれない。しかし、自分のことをちゃんと見てくれていないと知るや彼女たちは二人だけで外に出てしまう。恋のつらさと寂しさ故に人に気持ちを委ねていったそんな姉の姿だったのだと思う。
 最後には、彼らの望む場所にたどり着く。あんな感じに話を終えるとは予想はしていなかった。大人になった弟が冒頭に姉にねだった聖書の話かな?それを語り始める。不思議な映画だった。セリフが少ない分、いいセリフが多かった。主人公の彼らが美しい顔に無表情だったのが印象的だった。悲しい映画だった。

|

« ぱやぱや | Main | たかじんの委員会 »

「映画」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/43685/5348470

Listed below are links to weblogs that reference 霧の中の風景:

« ぱやぱや | Main | たかじんの委員会 »