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July 30, 2006

やわらかい生活

 この映画を観ていたら、思うことが色々湧いてきた。
 両親と親友の死によって躁鬱病になった主人公の優子。出会い系で知り合った痴漢Kさんとの場末の映画館の痴漢行為でやってきた蒲田を気に入り、転居してくる。一流大学を出て、総合職について・・・、そんな路線から離れて、「夢の中で歩いたことがあるような」東京に見えない東京の下町蒲田でスローライフな生活を送りながら、蒲田のことを配信するHPを立ち上げている。病気のため或いは亡くなった両親の保険金のおかげで、働かないで写真を撮る毎日。そこに関係してくる男たち。
 失ったものを誰かと共有したいと、両親は阪神大震災で亡くなったと優子は嘘をつく。居候の従兄弟は、同じ悲しみは共有出来ないけれど、人の痛みは分かるようになると説くが、優子の共有したいものはひとりぼっちになってしまったことかもしれない。見知らぬ男性に局部を触られに出かけるのも、誰かにふれられたい意識されたいという寂しい気持ちの表れだ。
 多くの女性に共感が持たれると宣伝に書かれていたけれど、寂しさや悲しさを怯えているために、自分の気持ちを入れないようにしている姿が似ているからだろう。どうせ、いつかは去っていくかもしれない人達に心をかけるとまた置き去りにされた寂しい心が始まってしまう。寂しくて悲しい主人公は、出会った人達とまた別れ、自分以外の別の顔をしている人達と大きく距離を広げてしまった。なんて悲しい物語だろう。関わるなといいながら、誰でもいいのよ、愛はないのよと言いながら、ひたひたと心の奥底で誰かに近づこうとしている。また、主人公に寂しい日々が始まる。多くの女性や男性達もこの映画を観て、寂しい心の到来を受け止めるだろう。

 革ジャンを着てダメな夫を演じた豊川悦司の役割がいい。この映画の評に、こんなにいっぱいいい男が出てくるのはおかしいが・・。と書いているのがあったが、確かにそれは普通ぽくない。松岡俊介なんてできすぎの同級生ではないか。で、鬱病のヤクザを演じた妻夫木聡が、妻夫木君に似てる別人のような顔で演技しているのが、この人わき役うまいなぁと思った。それもこれも、演技力抜群の寺島しのぶ相手にそれぞれの男優が頑張っていたので、余計に演技の印象が残ったのかもしれない。飾らない普通の演技を演じられるのはこの人が一番うまいだろうと思う。しかし、まぁ、なんですねぇ。私は女なのですが、どうも綺麗な女が好きなので(好みは大人っぽいかっこいい女性が好きなようだが、別にバイではないけれど・・・)、女性の○き顔が麗しくないのが、なんかリアルすぎて興ざめしてしまう。しかし何でも出来る女優さんだ。
 亡くなった両親も親友も別れた恋人も出てくることなく、彼女の人生を感じ取れる演出で、入りやすい作品だった。難をいえば、蒲田の良さが今ひとつ感じられなかった。東京の大都会で住んでいるなら兎も角、一地方都市と変わらない姿に、九州出身の主人公がはまるとは思えないので、もっと蒲田の良さを描いて欲しかった。というか、監督が蒲田を愛していないのが見て取れてしまったのだ。

 思うこと・・・、色々ありました。まず、主人公の躁鬱の姿。近年患者数が増えているというか、ちゃんと病院に行くようになってきているので増えているのかもしれないけれど、鬱の友人達を思いだしてしまいました。同じように近しい人が亡くなったりしても病気になる人とならない人がいて、どうしてなってしまったのだろうと、気になってしまう。きっと、理由は多すぎて、理由はきっと何も無いのだろう。どうしてあげたらいいのかわからない。だから、従兄弟が本屋で本を手に取る姿がよく分かる私も本を買ったもの。
 あと、両親が阪神大震災で亡くなり、恋人は地下鉄サリン事件で亡くなり、親友は9.11の事故で亡くなったと、嘘をつく話。私は自分自身が阪神大震災の被害に遭い。同じ年に起こった東京での地下鉄サリン事件で上司が死亡したと友人から電話があり、その後に実行犯の大学の時の友人として弟のところに警察がやってきたと友人が言っていた。また、尼崎の列車衝突事故で衝突したマンションに友人が住んでいた。
 こんなことを書いたら、主人公のように嘘だと思われてしまうのだなぁと、思ってしまった。
やわらかい生活オフィシャルサイト

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