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October 22, 2006

カポーティ

 「ティファニーで朝食を」で有名なトルーマン・カポーティがノンフィクション作品「冷血」を書き上げる話である。
 冷血は11月14日にある田舎町で起こった殺人事件をアラバマ物語で有名なネル・ハーバー・リーをお供に取材に行き、「別に犯人は捕まらなくてもいい」と公言しながら捜査官の家にまで入り込み、事件の犯人を取材するために犯人達に良い弁護士を紹介し、「冷血」と言う題名は「取材のために判決を引き延ばすあなたのことか」と警部に言われながら、最高裁迄上告した犯人達に、「結果が出ないから(小説が)完成出来ない」と悩み、本当に犯人達がカポーティをアミーゴだと思っていたのかは定かではないが、彼らの最後の瞬間を見たカポーティは、小説の中ではない現実の死刑執行を目撃したことによって呵まれるという話だ。
 不幸な過去を持つ者同士。カポーティは、「同じ家から彼らは裏口から家を出て、僕は玄関から家を出た」と、彼らを表現するように、彼らのうち特にネイティブアメリカンの血が入ったスミスに興味を抱く。新境地を開くことが目的で、作品としての評価が目的で、彼らから冷血の瞬間を引き出すために、言葉のやりとりが悲しい。
 いい大人になった私は、このようなやりとりを別に心を許した犯人に酷すぎるとも何とも思わないが、人に興味を持って接することの代償を感じてしまった。
 見終えると椅子の背にぐっと体を押し当て、脳の半分がうごめいているのが分かった。よい映画とも感動した作品とも集中して見た作品とも今回は違っていた。
 なぜだろう。
 カポーティが、「彼らに何も出来なかった」と打ちひしがれているときに、ネルが、「彼らに何もして上げる気がなかったのに」と言った最後の言葉が、重く押し倒したからかもしれない。
 身勝手なカポーティの姿はあまりにも、私や人間の姿を映し出している。死刑執行を言い渡された彼らに接していくうちに、単なる犯人から一人の人間に変わっていく。また、犯人達も興味を持つ有名人のカポーティを利用しようとするが、弱者である彼らは、利用される側で止まる。それは、生の駆け引きだったから、単純な駆け引きも最後のカポーティの姿になるのがよく理解出来る。本当に自分のためだけに生きて、大きな後悔の念を感じることがあるのだ。また、カポーティのように繊細で冷血でなければ、天才の名をあげられることもなかったであろう。ネルとの対比が面白い。
 カポーティは1984年に亡くなっている。彼の生きてきた軌跡は異質だからか、彼のことをまとめた作品が多いようだ。あの時代に同性愛者であることを公言していたり、舞踏会を企画するなど、時代の寵児としてもてはやされている。

 M:I;3でインパクトのある冷酷な悪役を演じたフィリップ・シーモア・ホフマンと全然違うホフマンが映画の中に存在していた。これでは、アカデミー主演男優賞を渡さない方がおかしいだろう。

 2006年公開のカポーティを扱った映画Infamousがある。これは、殺人者スミスが主人公になっているようなので、この「カポーティ」と違った切り口及びカポーティの演技合戦が楽しみである。日本で公開しないかな。

公式サイト

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Comments

記事を読んで、他者との関係が結局は興味(好奇心)かビジネス(利害関係)でしかないと考えた自分に気づいて、すこし反省しました。「Infamous」はIMDbの「たいへんよい映画だが "Capote"にとうてい及ばない」という評価はかわいそうですよね。未見ですが。

Posted by: 角連 | October 26, 2006 at 12:16 AM

★角連さま
 コメント有り難うございます。
 日本人にはなじみのないカポーティの映画ですが、映画投票では割と人気があるようです。私はあの中でネルのように、自分とだぶるところがあるカポーティを見ていたので、あまりいいものではありませんでしたが、「冷血」はどんな風に書かれているのか、それによってこの映画がどのように描かれていったのか、本を買ってみたいと本屋の平積みを探しました。見つかりませんでしたが・・・。
 やはり、カポーティの演技力が凄いので、到底届かない映画なんでしょうね。日本に来ることはなさそうで残念です。

Posted by: 海音 | October 26, 2006 at 08:24 AM

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