« 2008 映画総決算  | Main | 青い鳥 »

January 04, 2009

ラースと、その彼女

 偶像を愛するという内容を聞いていたが、話は思っていたような展開ではなく、いいように裏切られた。
 田舎町に住む兄夫婦とその敷地内のガレージに住む弟。彼は敬虔なクリスチャンで、勤勉で、しかし、ネガティブな行動は兄嫁を不安にさせていた。ある日笑顔で僕の彼女と紹介したのは、男性用のセックスの道具であるリアル・ドール。HPの設定のまま彼女の生い立ちを語り、聞こえない彼女の声を代弁する。彼女を病院に連れて行こうと、医者に相談し、彼の行動は今彼が必要としているから、このままつきあっていきましょうと。この町のいい笑い者になると、兄夫婦は嘆いた。
 観客の私達は、彼がどうしてこのようになっていってしまったのか、兄が自分を責めたり、ラースが医者と話をすることで色んな情報を与えてくれる。でも、主人公が悩んだ話がこの映画の中心ではないのだ。彼に接していく多くの人達が、あまりにも優しく、彼を包み込む。彼が自分でも分からない程に殻を作り、まわりにも大きな壁を作っていたので、人々の声が届いていなかったこと。それを少しずつ接していくことで解放されていく。その少しずつを見せて貰えるお話しなのだ。
 この映画で泣く人はいないのだと思うのだが、あまりにも人に対する優しい気持ちが溢れていて、私は涙を流していた。
 私の町は下町で、神戸の中でもいいものがたくさん残っている地域の一つだと思う。その中の一つは、知らない人に話しかけられることだ。幼い時に、母に手を引かれて買い物をしていた時に、知らないおばさんが母に話しかけた。お金を落としてしまって困っているので、このチューインガムを買って欲しいと言ってきた。母は何も聞かずに千円か2千円かを渡していたと思う。子供心に100円のガムなのにと思ったから、今でも記憶があるのだが、そんな光景が記憶と残るぐらい、いい時も悪い時も誰かに話が出来る町なのかもしれない。今でもエレベーターで知らない人と喋り、買い物に行くと知らないおばさんが、「それやったら、向こうの店の方が安かったで」と語りかける。実際、他の地域では出来ないが、私も普通に話しかけるし、知らない子供でも、「こんな所に空き缶置いたらあかんやろ」と言うのは言える。
 確かにそんな町は鬱陶しくて、近所づきあいもしなきゃとかでイヤかもしれない。私の所は前の家も今の家も近所づきあいがいらないところなので、私にような変わり者には有り難い。
 でも、優しい目線でみんな見てるねんなぁというのは、色んなその人の人生のBGM程度にはめちゃくちゃ必要なことなんだと思う。人は人と接触することでしか変わっていかないのだから、気持ちも変わらないのだから。
 この映画を観て、優しい目線が嬉しくなった。

|

« 2008 映画総決算  | Main | 青い鳥 »

「映画」カテゴリの記事

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/43685/43641886

Listed below are links to weblogs that reference ラースと、その彼女:

» ラースと、その彼女 [今宵、サムソン・マスマスラーオの映画座で]
    = 『ラースと、その彼女』  (2007) = 雪に覆われた、小さな田舎町。 町の人たちから慕われている心優しい青年、ラース(ライアン・ゴズリング)は、純粋すぎるがゆえに、極端にシャイで、女の子とまともに話すことも出来ないでいた。 そんなラースを心配していた兄夫婦のもとに、ある日、当のラースが彼女を紹介しにやってくる。 しかしながら、その彼女とは、インターネットで購入した等身大のリアルドール、’ビアンカ’であった。 困惑する兄夫婦は、町の医師に相談し、..... [Read More]

Tracked on January 10, 2009 at 01:54 AM

» ラースと、その彼女★★★☆+劇場3本目:町の人たちの親切な心に... [kaoritalyたる所以]
1/6に観た映画は、紹介する彼女がリアル・ドールだった!というおかしなストーリーで、公開を期待していた『ラースと、その彼女』です。感想を半分ほど書いていた時にPCが固まり、意気消沈ですが、改めて簡単にアップします。まずはYahoo!から、解説等をコピペでどう...... [Read More]

Tracked on January 24, 2009 at 07:24 PM

» ラースと、その彼女 を観ました。 [My Favorite Things]
本当はマドンナの初監督作品を観るつもりでした…ですが、1時間間違えたおかげでこのハートフルな作品に出会いました。 [Read More]

Tracked on January 27, 2009 at 11:05 AM

« 2008 映画総決算  | Main | 青い鳥 »